2019年9月18日水曜日

Chapter4:貴族の遺産


 『貴族の遺産』


キアラによる小咄から始まる


キア
(……その鬼はヒトの心に棲みついて弱い心を食べてしまうんだ)


〇ランスカラ集落内



キアラが、ベルナデッタとディーンの前で話をしている


ディーン
「それで!
それで心を食べられたヒトはどうなっちゃうの⁉」


キアラ
「うん 心を食べられたヒトは
その鬼を倒さない限り決して目を覚ますことの無い眠りに落ちてしまうんだ」


ベルナデッタ
「……まあ
それではそのヒトは自分から目覚めることは出来ないのですね……」


ディーン
「え?え?どうしてさ?」


キアラ
「だからそうならないように気をつけろって事なんだと思う……」


ベルナデッタ
「……身近な人を大切にする 自分に嘘をつかない
……とても大事なことですね」


キアラ
「うん……
きっとお祖父さまはそういう事を言いたくてこの話をしたんだろうなぁ……」


ディーン
「……ね?ね?なんで自分で起きられないの?
鬼をやっつければいいんだろ?」


ベルナデッタ
「うふふ……」


キアラ
「……ああ それは」
   
兵士がやってくる


兵士
「キアラ殿!殿下がお呼びだ!」


キアラ
「ごめん ディーン!(※改行)
またあとで!」


ディーン
「えー!」



〇フレーニア軍陣 カレル陣幕前



陣幕に入ろうとすると兵士が出てくる
兵士に道を譲ってからキアラが入る


〇カレル陣幕内

   
カレル、デヴィッド、大臣、騎士
机の周りで大臣と騎士が右往左往


キアラ
「キアラ入ります」


キアラ 入ったところで立ち止まる
カレルが大臣等に指示を出している


カレル「それはあっちに」大臣が何かしら移動
カレル「これはそっちだな」騎士がカレルの隣に移動


騎士が出て行く


デヴィッド
「殿下 これはあちらの方が宜しいかと」


カレル
「ああ そうか
……ではこれはデヴィッドの方で処理してくれ」

デヴィッ
「おおせの通りに」


デヴィッド、少し考えて


デヴィッド
「フム……では申し訳ないが おふた方
これも例のように頼みます」


大臣「ノォオオオオッ!」
大臣「クゥウウウウッ!」


兵士入ってくる


兵士
「北の村から使いがやってきたのですが
あの……
ライヘル様が大臣方をお呼びしろと……
ライヘル様は貴族で」
大臣「皆まで言うな!」
大臣「ぐふうう!」


カレル
「北の村?
村長の使いだな?
二人とも行ってくれ」


大臣「ハイハイハイハイィイイイイッ!」
大臣「でーはではではではではぁああ!」


大臣たち入り口に向かう


大臣「えーい!邪魔だ小娘!」
大臣「我らの仕事が多すぎはせんか……?」


キアラを押しのけるようにして陣幕の外へ出ていく
デヴィッド、キアラに気づく


デヴィッド
「フム……?
来ていたのかね?」


デヴィッドの言葉でカレルも気づく


カレル
「ああ 気づかなかった!
呼び出していながらすまない!」


キアラ
「あ いいえ
……とても忙しそうですね」


カレル
「ハハ
おかげでな
食料の問題はあらかた解決したし集落の者とも和解できた


だが 以前にも話したがこれからだ
当面は兵士を集めて軍容を強化せねばならんのだが……
今はその準備といったところでな……
大臣が居てくれて助かる


……さて キアラ」


キアラ
「はい!
何でもやります!」


カレル
「アハハッ!
まだ何も言ってないよ


   ではデヴィッド」


デヴィッド
「フム……
今回の任務だが北へ向かって貰いたい」


キアラ
「北……北の村ですか?」


デヴィッド
「フム まぁ間違いではないのだが……もっと北だね
正確には北東なのだが……
ふむ 私の庵があったろう?
あそこからずっと北だと思ってくれればいい」


キアラ
「では湿原を抜けて北へ?」


デヴィッド
「今回はそれはない
北の台地を抜けた先から行ってほしい
北の地理がまだ分からぬからそれも確かめて欲しい」


キアラ
「『それも』……ですか?」


デヴィッド
「フム……
今回の任務は大きく分けて2つある


まずはランスカラ北方の調査
そしてもう一つ
王国貴族ラヴィンツェル卿の所有する塔の調査だ」


キアラ
「貴族の塔を……?」


カレル
「……うん
実はラヴィンツェル卿は 開戦前から行方が知れないんだ
塔に居る可能性もあるから確認してきて欲しい
それと……卿が不在でも塔の中を捜索してくれ」


キアラ
「?」


デヴィッド
「フム……
ラヴィンツェル卿は錬金術に興味を持っていたようなのだ」


キアラ
「錬金術……ですか?」


デヴィッド
「……ふむ 簡単に説明すると黄金を造る実験をしていたようなのだ」


キアラ
「黄金を⁉
……すると 塔には……」


カレル
「あればよし
……黄金がなくとも何かしらの蓄えはある可能性が高い
ありていに言ってしまえば軍資金の徴発が目的なんだ」


デヴィッド
「キミの活躍で危機的状況は回避できたが食料は潤沢というわけではない
兵力の充実を図ろうと思えば資金はあればあるほど良いのだからね」


キアラ
「……分かりました!」


カレル
「これを
卿に宛てた書簡だ
もしラヴィンツェル卿に面会できたなら渡してくれ
これを読めば協力的になってくれるはずだ


……今回もライヘルを同行させる
使節としての作法も道中教わるといい」


デヴィッド
「……ときに
地図は書けるかね?」


キアラ
「あ オーサが書けます」


デヴィッド
「そうか では道中の地図も宜しく頼むよ」


キアラ
「分かりました!
他に何かありますか?」


カレル
「う~ん……
無い……かな?」


キアラ
「では行ってきます!」

キアラが陣幕から出て行く



カレル
「あ 支度金……」


〇カレル陣営



カレル
「支度金を忘れていったぞ
アハハッ
キアラはそそっかしいな」(○○ゴールド手に入れた)


デヴィッド
「件の塔はアレムアリというのだが
フム……
常々行ってみたいとは思っているのだが少々遠くてね」


騎士
「少しづつだが近隣の村から兵士に志願する者が集まってるようだ
どうせ食い詰め物が集まってきたのだろうと思ってたのだが……
なかなかどうして!
中には目を輝かせた若者もいるのだよ!」
騎士
「南の方はまだ無事らしい
東もラグシルトの町まではどうにか無事のようだ
このところメリアの連中の動きが鈍いような気がしてならん……」
騎士
「新たに兵が増えたことで指揮系統を見直す必要があるが……
ウーム 有能な騎士が足りんなぁ……」


兵士
「あ 騎士さま!
僕 北の村から来ました!
僕も人の役に立てるよう頑張ります!」
兵士
「おうおう!
おらぁ力はあるんだけどアタマが足んねーんだぁ!
大食いだからぁ おっかぁに言われたんだよぅ!
兵隊になれば腹一杯食えるよー!ってよぅ!
だからぁ 兵隊になったんだぁよ!」
上級兵士
「部下が増えたのですが……
複雑な心境なのです


兵士に志願したのは付近の住人なのですが
この辺の連中は頭が悪いから
きっと戦場では真っ先に突撃していきますよ


気のいい奴らなんですよ
死なれたら目覚めが悪いではありませんか……」


上級兵士
「これはキアラ殿
装備の持ち出し許可が降りております
支給品ではないので個人負担となりますが悪しからず!」


買い物可能

〇ランスカラ集落内



住人
「うちの娘最近若い兵士と仲が良いんです!」


住人
「なんかあっちこっちから人が来るようになったんだけどよう……
メリアって名前の魔女が攻めてくるって本当かい?」


住人
「王子様はいい人だね
俺達にも食いモンを分けてくれるよ!」


住人
「くっそー!
憧れのあの娘が王都の兵士に取られちまった!
おれも兵士になろうかなぁ……」
王都の若者
「僕も兵士に志願しようとおもうのです
守られてばかりじゃいけませんからね!」


「戦う殿方って
 ス・テ・キ!」


キアラ兵
「おう!キアラ!
俺達新兵の訓練に回されてんだけどよ
デヴィッドって人はちょっと変だぜ!
湿原に行って数日過ごして戻って来いっていうんだよ
こんなんで戦いになって大丈夫なのかねぇ?」


キアラ兵
「若い連中にはまず教えておかねぇといけねー事がある!
食料は現地調達が基本だ!
湿原は魚でもカエルでもなんでも食えていいよな
けどワニの棲家には入らないようにしないとな!
こっちがエサになっちまうぜ!」


鍛冶屋
「……最近は南の方から商人も来るようになった」


   商品追加が追加される
  


〇ランスカラ集落内



・ベルナデッタとの会話



ベルナデッタ
「キアラ こんな話は知っていますか?
古いお城や塔には幻獣が住んでいて
その幻獣は親しい人の姿で現れて人を惑わすそうでですよ」


キアラ
「へぇ……
でもそれならわたしは怖くないな」


ベルナデッタ
「あら 何故ですか?」


キアラ
「だって きっとベルナデッタの姿だもの」


ベルナデッタ
「まぁ……」


キア
「ふふ……
 ……でも 本当にそんな幻獣っているの?
その話……」


ベルナデッタ
「古い本で読んだ物語ですよ
……キアラ?
……もしかして 怖いのですか?」


キアラ
「こ 怖くなんかないよ!」


ベルナデッタ
「……キアラ
本当は怖いんですね……?うふふ」


キアラ
「もう……!」


ベルナデッタ
「気をつけて……」(回復アイテムをくれる)



『アレムアリの塔』



〇アレムアリの塔 入口



塔に到着したキアラたち
扉越しに開門を呼びかけている   


キアラ
「開門ー!


   開門ー!」


返事が無い


キアラ
「……」


ライヘル
「……声が小さいのだな
もう一度呼んでみろ」


キアラ
「開門ー!!!
カレル王子殿下の使いで参りました!!!
ラヴィンツェル卿に取次ぎを願いたい!!
……
開門ーーーーーー!!!!!」


キアラ
「……ゲホッゲホッ
ノドが……」


ディーン
「……返事ないね」


オーサ
「留守ではないかの?」


キアラ
「そんな……」


ライヘル
「バカ者!
仮にも貴族の別荘だ!
主が不在でも留守は残すに決まってるだろう!」


ディーン
「……じゃあ!
居留守だ!」


キアラ
「そんな……」


ライヘル
「あるか!」
やり取りの間にオーサが扉に寄っている


オーサ
「……開いとるのぉ」


ライヘル
「なんだと!?」


ライヘルも扉を確認する


ライヘル
「……開いているな」


ディーンも寄っていく


ディーン
「真っ暗だね……」

キアラは周囲を気にしている(キョロキョロ)



キアラ
「……?だれ?
どこを?」


ディーン
「どうしたの?」


キアラ
「?……ううん
そら耳みたい」


応えながらあらぬ方を向いている
 (あるいはゆっくりキョロキョロ継続)


オーサ
「火がついたぞい」


ライヘル
「よし入る……(中に入ろうとしてキアラに向き直る)おい!
小娘!」


キアラ
「……あ うん」
   
中へ入ると
扉閉まる『バターンッ』


〇アレムアリの塔内部



           ◆


〇扉の近く守衛室(でなくてもいい、適当な小部屋)



「誰も居ない……」※誰のセリフでも構わない


部屋から出ると人影


「誰かいる!」


逃げていく人影
追いかけても居なくなる


           ◆


〇塔外周 塔本体との境界



塔本体と増築部の素材が違う


オーサ
「ここから石造りじゃの?」


キアラ
「内側の方が頑丈そうだね」


ディーン
「変な造りだなぁ」


ライヘル
「……なぜだ?」


ディーン
「だって普通は外側を堅くするだろ?」


オーサ
「ほっ!確かにの!」


キアラ
「ディーンすごい!」


ディーン
「え?なんで?」


ライヘル
「く……
釈然とせんぞ……小僧の分際で……」


           ◆


〇食堂



行われている饗宴
中心には貴族らしき男(ラヴィンツェル)


頬髯が見事な男
「おお!よくぞ参られた!客人よ!
大したもてなしは出来んが楽しんでいってくれ!」


誰かに話かけようとすると皆同時に消える
驚愕、混乱する一同


キアラ「……え」


ディーン
「で で で で で で」


オーサ
「……クルキスナよ……汝が僕に聖なる加護を……」


ライヘル
「やめろ!祈るな!」


ディーン
「でたーーーーーーーーーーー!!!」


ライヘル
「うるさい!!」


ディーン
「だ だだ だってあれ!おおおお化けぇ!?」


オーサ
「……クルキスナよ……ムニャムニャ……」


ライヘル
「貴様ら!いい加減にしろ!」


キアラ
「みんな落ち着いて!」


   一同、キアラに注目
 
キアラ
「私達はここに調査に来たんだから
今のが何だったのか確認しなきゃ」


ライヘル
「……よし 落ち着いたな!
行くぞ!」


歩き出すがキアラだけ動かない


キアラ
「待って!」


全員振り向く


キアラ
「ごめん……腰がぬけて……」


三人
「……」


           ◆


〇厨房



ライヘル
「う……酷い臭いだな」


オーサ
「ここは調理場みたいじゃの……」


キアラ
「この臭い……
食材が腐ってるんだ……」


ディーン、隅の暗がりに人影を見つける


ディーン
「あ 誰か居る!?」


キア
「まさか また幽霊……?」


   近づくと襲ってくる
   戦闘
   敵は明らかに不自然な生命
   戦闘後




ライヘル
「なんなんだこれは!?」


ディーン
「もういやだー!」


           ◆


〇2F

   
客室が数部屋
各部屋に数人ずつ人がいて話が出来る


           ◆


「仕方無かったのよ……先生に逆らえばこれまでの勉強が全部無駄になってしまうのだもの……
 あなたなら分かってくれるでしょう?」


「そんなの間違っている!
 ……ああ!
 僕はキミを愛していたのに!」


           ◆


騎士
「あのえせ錬金術士め!
何が科学だ!殺しても殺し足りぬわ!
……貴様もワシを笑いに来たのかッ!?」(戦闘)


           ◆


神官
「けしからん!
あの学者め経典が間違っているというのだ!
教会が捻じ曲げただと!
まったくけしからん!
そなたもそう思うだろう?」


           ◆


子供
「もーいーよ!
……誰も探しに来ないや
僕はここに居るんだけどなぁ……」


           ◆


「そんな顔するな……
 すぐ戻ると言っているだろう?
 クローヴァまで行って帰ってくるだけだから
 ……それだけの事だから」


           ◆


老人
「力無き者の剣となるか……
……もう止めはせん
虚無に気を許すでないぞ……
聖クルキスナ 聖イグナシオの導きがあらんことを……」


           ◆


ミクシャ
「あん時は自分でもビックリしたなぁ……
いつ死んでもおかしくなかったじゃないか?
我ながら良く立ったものだよ!
……なぁ?
俺 役に立てたかい?」


           ◆


ヨーゼフ
「アレはまだ若い……理想だけではイカンのだ
あの愚か者を頼むぞ
……それにしてもあの男
剣に迷いがあったわ……」


           ◆


ヨシュア
「なぜ近衛の地位を棄ててまで弟の下に付く!?
貴様程の男ならば俺の片腕にもなれたものを……!」


           ◆


アリエル
「ねぇ?
もう騎士にはなれそう?
……いつ帰ってくるの?
ちょっと……淋しいな」


           ◆


ベルナデッタ
「こんな話知っていますか?
子供の居ない老夫婦がその寂しさを紛らわす為に木の根を赤ん坊に見立ててとても可愛がったそうです
すると老夫婦の愛情がそうさせたのか木の根は本物の赤ん坊のように育ったというのです
ところが赤ん坊はどんどん大きくなって……
……そんなに見つめて……どうかしたのですか?」


           ◆


デヴィッド
「フム……この塔の材質は石のようだが石ではないな
木造の部分は後から付け足したのだろう
横穴に併せて階段を増設したというところか?
しかし
フム……見られているな」


           ◆


カレル
「卑怯だと罵ってくれて構わない……
だが 父も兄も死んでしまったんだ
ぼくはやるぞ……
この国を変える」


           ◆


少女
「十七歳の誕生日になったら
きっと素敵な騎士さまがわたしを連れて行ってくれるのよ!
ねぇ そうでしょ?」


           ◆


   フェフナーの部屋の前
    部屋から出て行く人影
   追いかけても誰も居ない


〇フェフナーの部屋


   錬金術師フェフナーの手記をみつける


・手記1



 我輩の名はフェフナー、自ら名乗るのもおこがましいが万能の科学者にして希代の錬金術師である。
 己を大きく見せんとするのは卑小もののする事であり、真理の探求者たる錬金術師のすべき事ではない。我輩は真の錬金術師であるゆえ先の口上は卑小ものの如き名乗りとは違う、真実を伝えんが為に己を明らかにしたということに留意されたい。
 我が名に誓ってこれより書き記す事とは迷妄の類ではなく事実……我輩の知る限りではあるが……である。


某年某月某日……ラヴィンツェル卿の招待を受けた。
 卿は我輩の研究に大層な関心を寄せており、別荘に招き話を聞きたいとの事であった。
卿は何かと黒い噂の絶えない人物ではあるが国内でも指折りの資産家である上に各方面に顔が利く。
 何より資産の殆どを一代で築いたというからなかなかの傑物である。このような人物と懇意になっておけば何かと見返りがあるのかも知れない。我輩は卿の招待に応じることにした。
 卿のもとを訪れる際にベルガリックの研究室は留守を弟子たちに任せ、身の周りの世話に3名のみを伴って出発した。


某月某日
 近隣……と言っても2日以上歩く……の住人が言うにはアレムアリの塔というらしい。
聞き及んだところによると眼前のこの塔はフレーニア建国よりもはるか以前よりこの地にあるという話だ。
 文献ににもその名を確認することが出来るが、今でこそ断崖にそびえる大灯台といった風情だが、建造当時は小高い丘の上に立ち周囲を睥睨する威容を誇っていたようだ。
これは私の想像だが、丘は海からの波により気の遠くなる永い歳月をかけ削り取られ岸壁になったのだろう。……しかし、この持論には大きな欠点が存在することを認めざるをえない……なぜなら、それだけの年月この塔はこの地に存在したことになるのだ。
 石に見えるが石ではない……我輩にとっても不可思議な組成の建材で造られているこの塔は、風雨と年月という熟練の石工にも加工は容易ではなかったらしい。
このような遺跡が世界には数多確認されている。全てが同一文明の痕跡であるとされるが、これといった根拠はない。だが疑うべき根拠もないこの文明は、学者仲間からはトレーンと云われていた。
 トレーンといえば……随分と古い話だが、我輩がバイア・フレーにて教鞭を執っていた時、優秀な研究者が居たのを覚えている。そういえばあの聡明な青年はトレーンの遺跡に関心を持っていた。錬金術を志していれば一角者になったであろうあの若者は考古学と歴史を尊んだ。後年王に仕えたそうだが王の勘気に触れたと伝え聞いた……あの才覚ならばのたれ死ぬということもあるまいが。
 過去に思いを馳せるとは、我輩も歳をとったのかもしれない。
 知己を語るのはまたの機会としよう。


某月某日
 塔では丁重なもてなしを受けたが我輩よりも後に都を発ったという卿の到着までは3日ほどの間があった。
 その間は手持ち無沙汰で塔内を散策したりしていたが、判った事がいくつかある。
 第一に、この辺境の塔は卿の別荘ではなく「秘密の研究室」のようだ。
というのも、この塔にはどうやら我輩以外にも錬金術師と称するやからが幾人もいるようだ。いずれも陰気臭く人の揚げ足をとる事ばかりに長けた鼻持ちならない連中である。弟子等にも彼奴らの言動には重々注意するよう指示したものである。
 そしていま一つの事実は件の、自らを錬金術師と称する胡散臭い彼奴らの迂闊な口より迸った……これもまた迂闊な内容を……己の研究の中身を他人に知られてしまうという愚行を、それを我が弟子が扉の陰よりしっかりと耳にしたという……その内容だが、なんたることだ。
 「黄金の生成」であった。


某月某日
 昨日、卿が到着し華やかな宴席が設けられた。
 饗応の席では些か落胆することとなった。
 宴席に不満があった訳ではない。我輩は塩の下に置かれる事もなく他の客人に対して申し訳なさを感じるほどの歓待を受けた。それに、初めてまみえたラヴィンツェル卿は、弁舌さわやかで闊達な雰囲気も持つ、頬ひげの見事な偉丈夫であった。人と為りもさることながら、なかなかに博学な男で話も弾んだ。久方ぶりに有意義な時を過ごしたものである。
 しかし……だからこそと言うべきか、卿の関心が卑俗なものであった事に落胆せざるを得なかったのだ。
 ラヴィンツェル卿は「黄金の生成」に大いに関心を寄せていた。


           ◆


   手記1を読み終わり


ライヘル
「やはり……か」


オーサ
「……軍師殿の仰った通りじゃの」


ディーン
「!」


ディーン
「ってことはやっぱりここに金があるんだ!?」


キアラ
「ディーン 私達はそれを確かめるために来たんだよ」


ライヘ
「綴じが切れているな この先のページが見当たらないが……
その辺りに無いか?」


キアラ
「……この辺には無いみたい……」


オーサ
「……数字と記号ばかりじゃの」


ディーン
「他の部屋……かな……?」


           ◆


キアラ
「……これは」


ライヘル
「フェフナーの手記の断片だな……研究の記録か?」


           ◆


・研究ノート1



 “世界の万物は「土」「水」「火」「風」4つの構成要素から成りこの4つの要素を指し「四大元素」と呼ぶ。
 これはおおよそ錬金術にたずさわるものには百年以上も前からの常識である。
ヒトの体とて例外ではなく、物質としての最終単位は「土・水・火・風」の「四大元素」であると考えられる。魔獣すらもこのくびきから逃れることは出来ない。万物の一切は、この「四大元素」に集約されていくのだ。
 それが我々科学者の定説であった。
 しかし我輩はこの真理を覆す発見をした。
 それはまったくの偶然であった。
 「四大元素」以外のものから構成されるとしか考えられないものが生成されたのである。
 ……この言葉が、万物の組成を追い求める錬金術師として正しいのかどうかはわからないが…………まるで…………それは実体を持たない霊魂のように思えた。
 我輩はこの霞の如く掴みがたい元素にトレーン文明と我が国の名を冠し「フレーン基質」と名づけた。


   途中まで読みライヘルが話す


ライヘル「ここから先だけ殴り書きだな……インクもそれほど古くないように見えるぞ」


   続きを読む


 この発見が我々の身に降りかかる悲劇の始まりだった。
 もはや我輩に為す術はなく、残された時間もわずかしかない!…………だが、これを読むキミ達にこの塔で起きる現象を解き明かす、きっかけくらいは書き残すことができるだろう!”


           ◆


   研究ノート1を読み終わり


ライヘル
「……続きがないな」


キア
「…………さっきの……
あれと関係が…………?」


オーサ
「……肝心な部分が無いようじゃのぉ」


ライヘル
「…………以前デヴィッドが世には「四大元素」では説明が付かないものがあると言っていたな……」


ディーン
「ま ま ま まさかそれがさっきの幽霊とか……」


ライヘル
「チ……」


オーサ
「続きを探すのが良いかのぉ……」


           ◆


〇3F〇広間

   
   肖像がある
   頬ひげの男の肖像を調べる


キアラ
「名前が書いてある
3代目当主ラヴィンツェル2世……」


           ◆


〇ラヴィンツェル卿の部屋



   頬ひげの男(ラヴィンツェル)が独り言を言っている


「そうだ……ヤツが悪い
 仕方の無いことだ
 いつまで経っても金を作らぬから……
 騙されてるのを知らないとでも思ったか?


 ハハハハハ


 ああ 不愉快だ
 俺は不愉快だった?
 ははん?
 また貴様等の仕業だな?」


   キアラに気づく


「……どなたかな?」


キアラ
「ラヴィンツェル卿……?」


ラヴィンツェル
「ラヴィンツェル卿……!?
知っているぞ!
そう!あの有能な狂人の名!
寛大で残忍な男!
そうだ!
十三人の年若い娘の命を奪った卑しい貴族!


かつて知っていた!
私の名だ!
おお!今は知らない!


おお!止めろ!
違う!


止めろ貴様等!


見るな!」


ラヴィンツェル卿消える


キアラ
「消えた……」


オーサ
「……おお聖クルキスナよ……」


ディーン
「俺 もうちびりそうだ……」


ライヘル
「幻覚だ!
どこかにトリックがあるに決まっている!」
付近を調べると隠し通路(見つけなくても先には進める)


・隠し通路見つけた場合



ライヘル
「それ見ろ!」


オーサ
「……無理がないかのぉ?」


キアラ
「……行ってみよう」


           ◆


〇隠し通路

   階段
   1F外周の隠し部屋


〇地下の部屋



   拷問具や寝台、血サビで使えなくなった武器類
   半透明の女性がいる
   女性に話しかけると何も言わずに消える


           ◆


〇4~5F

   錬金術師達の部屋
   最初の部屋以外の各部屋に鍵が掛かっている
   各部屋で研究室の鍵が手に入る


           ◆


〇最初の部屋

   日記がある


・日記



 気の触れた騎士が襲ってくる!
 助けて!
 誰か!
 たす


   血のりで他のページは見られない


           ◆


〇研究室

   各部屋に鍵が掛かっている
   各部屋で錬金術士の部屋の鍵が手に入る


           ◆


・手記2



牛頭月4日……
 錬金術を極めたと言っても差し支えない我輩にとって黄金の生成は不可能な事ではない。
 ただし投資に対し生成される黄金の価値が見合っているとは到底思えないのだ。
 理論は出来上がっているが試す気にはなれない……あまりにも無意味であるからだ。
 黄金の生成には生成する黄金の数倍の資金が必要になるのだ。


 ある閃きが私自身を説得した。
 ラヴィンツェル卿はよきパトロンになってくれるであろう。


某月某日……
 卿の求めに応じ研究を開始する。
 与えられた資金は我輩が要求したよりも桁が一つ多かった。
 素晴らしい。


年某月某日……
 年も替わりラヴィンツェル卿もさすがに焦れてきた様子だ。これ以上引き伸ばすのは難しいだろう。
 そろそろ一つの成果を示す必要がある。
 何、難しい事ではない。


馬人月某日……
 黄金の生成は成功した。我輩の理論は裏付けられた訳だ。
 卿に知らせるのは後日としよう。
 我輩は自分自身の研究に戻るとしよう。今は時間が惜しい。


某月某日……
 良き事と悪しき事あり。
 まずは良き事を記す。
 先日ラヴィンツェル卿が視察に来た。
 出来たばかりと偽り生成した黄金を見せる。
 卿はいたく感心していたが小粒の金が投資には見合わない事に気が付いた。
 我輩はかねてより考えていた計画を実行に移した。
 つまり、回数を重ね効率化を図れば問題はないと提案したのだ。
 数日間の実演を交えた説得の末、卿を納得させることに成功した。


 この男とは長く付き合っていきたいものだ。


 悪しき事。
 弟子の一人が、イザベラが消えた。
 ラヴィンツェル卿の使用人は塔の外へ出て行くのを見たというが外出の許可は出していない。
 何かおかしい。


某月某日……
 数日前より異臭がする。
 日を追って臭いは強くなるが原因は不明だ。
 誰ぞおかしな実験をしているのやも知れぬ。
 機会があれば問い質すとしよう。


 近頃、幻聴がする。
 この異臭と関係があるのだろうか?
 ここのところの精神的緊張からくるものかもしれない。


某月某日……
 ……異臭は腐敗臭であった。
 何ということだ……ホムンクルスの培養槽から発見された遺体はイザベラに間違いない。
 我輩が与えた首飾りが唯一本人といえる証拠であった。
 生前の、あの健康的な美しさは見る影も無かった。
 一体どのような経緯でかような姿に……?
 外に向かった彼女がなぜ塔内で?
 おお、だが憐れなイザベラ!今はお前の死を悼むとしよう!


           ◆


オーサ
「……この錬金術師は貴族をだましておったのかの?
悪い男じゃのぉ」


ライヘル
「どうやらそのようだが 一応金は作っていたようだ
嘘つき呼ばわりされる筋でもないといった所か」

押し黙るキアラに気づきディーンが声をかける



ディーン
「キアラ どうしたの?」


キア
「フェフナーさん……可哀相」


ディーン
「……へ?」


キアラ
「きっとイザベラさんのこと好きだったんだよ……」


ディーン
「……へ……へぇ」


           ◆


〇黄金の発見場所



   宝箱を空ける
   「『黄金』を手に入れた!」


キアラ
「……」


ディーン
「……随分と」


オーサ
「……ひかえめじゃの」


ライヘル
「小さい!
これっぽっちか!?
これではとんだ無駄足だぞ!」


キアラ
「とりあえず もって帰ろう……」


(アイテム説明欄
 「小指の爪ほどの金が幾つか……」)


           ◆


・手記4



某月某日
 幻聴が酷い!
 見るの見ないのと、何者かが囁いている!
 関連して四六時中視線を感じるようになった。
 これは何かの薬品にやられたのかもしれない。


 マーカスに薬を作るよう指示する。


蟹月三十日
 些か意識が不鮮明だが幻聴は消えた。
 どうやら薬が効いているようだ。


 雑事の多くを弟子に任せしばし休息をとるとする。
           ◆


キアラ
「幻聴……」


オーサ
「……どうかしたかの?」


キアラ
「……ううん
なんでもない……」


ディーン
「キアラ なんか変だよ?」


キアラ
「え……
……だいじょうぶ」


           ◆


・手記5



某月某日
 異変が起きた!
 ある朝、目が覚めると、傍らにはイザベラがいたのだ!
 己の心の臓の音がまことに大きく聞こえ、血が引き六腑が冷えていくのがよく解った。
 肉体が変調をきたすのに反し頭は冴えた。
 冷静によく観察するにそれは幻などではなかった。実体があるのだ。
 触れることができた。確かにイザベラであった。


 非合理な背徳を感じたが直感的にイザベラの事は皆に隠した。


 これまで気が付かなかったが、よくよく観察するに他の錬金術師たちがよそよそしい。
 他人のとの接触を避けているようだ。隠す側に立ち初めて解ったが、何か知られたくない秘密を感じる。
 胸騒ぎが収まらない。


某月某日
 イザベラの口から信じられない事を聞いた。
 彼女はラヴィンツェル卿に殺害されたのだという!
 イザベラは死に至るまでの有様を淡々と話すのだ。
 我輩は気が触れたのだろうか?
 目の前のこれは一体なんだ?
 頼む今は消えてくれ!


キアラ「これって…………!」
ライヘル「どうやら核心に近づいてきたようだ」


某月某日……
 人の数が合わない。
 なぜ今まで気づかなかったのだろうか?
 生活時間がまちまちなため正確に把握できた訳ではないが、知らぬ顔が……
 いや、もはやそんな問題ではない。
 クルキスナ教の僧侶や宮廷の貴婦人が居る。甲冑に身を包んだ騎士などはもう悪い冗談だとしか思えない。
 もはや間違いなかろう。イザベラと同じなのだ。我輩以外にも……
 いや皆の元にも客が訪れていたのだ。
 思い起こせばあの少年も誰かの客だったのではなかろうか?
 この塔はおかしい。


某月某日……
 なんということだ!
 弟子の一人が、マーカスが我輩の部屋で死んでいた!
 どうやら自ら命を絶ったようだ……。
 もの言わぬマーカスの傍らには悲しげなイザベラが立っていた。


 何が起こったのかは想像に難くない。


某月某日……
 気が狂いそうだ!
 マーカスが!
 マーカスとイザベラが語りあっている!
 我輩の部屋で!研究室で!食堂で!
 おしゃべりをやめろ!


某月某日……
 錬金術師の一人が死んだ!
 原因は斬殺
 他殺に間違いない。


 うすら寒いものを感じる。


某月某日……
 連中は必ずしも友好的ではない。
 それぞれに個性があるのだ。


 誰の記憶から這い出たものかは知らないが、中には粗暴な輩も混じっている。
 連中はまるで記録を再現しているかのようにどこか虚ろだ……。
 ともかく我々は各々が部屋にこもりがちになり互いに顔を合わせることを避けるようになった。
           ◆


ディーン
「……幽霊に
……殺された?」


ライヘル
「……アタマがおかしくなりそうだ」


(※)キアラ
「下の階のあれって……」


※2階で会話しているなら


           ◆


・研究ノート4



 我輩の勘が正しければ連中は「フレーン基質」の擬態である。
 望んでいた結果ではあるが虚脱感を感じる。
 いやそれ以上に恐怖を感じている。


 この先は仮説となるが「フレーン基質」の行っている擬態は我々の人格を構成する要素の再生なのではなかろうか?


 連中は我々の記憶の中と寸分違わぬ姿で現れる。立ち振る舞いも声色もそうだ。生前の仕打ちも間違いなく覚えている。
 しかし生物……連中を生物として定義するならば……としての性質は異質である。
 物理的に関係を絶つこと……つまり死に至らしめること……は恐らく不可能だ。


 我々はあらゆる方法を試みた。
 中には気が触れているとしか思えないおぞましい試みもあった。
 しかし全ては徒労に終わった。
 連中はどこに閉じ込めようと、焼こうと、埋めようと、いつの間にか存在する。
 「不死」なのだ。”
           ◆


ライヘル
「……
不死身だと……?」


キアラ
「……やっぱり実験が原因だったんだ
けれど……記憶の中の……?」


オーサ
「ワシらのアタマの中が分かるのかの?」


ディーン
「!
なんだ!何とかってのが化けてたのか!」


キアラ
「ディーン?」


ディーン
「幽霊じゃないんだろ?
もう怖くないね!」


ライヘル
「……どうするつもりだ!?
相手は不死身なんだぞ!?」


ディーン
「何言ってんだよ?
やっつけに来たんじゃなくて調べにきたんだろ?」


キアラ
「あ そうか……」


ディーン「それに
キアラはあの不思議なお守り持ってるだろ?
だから大丈夫!」


オーサ
「おお そうじゃな」


ライヘル
「何を根拠に……
……フン!」


           ◆


・手記6



某月某日……
 彼は入れ替わっているとしか思えない。
 彼自身外見にも言動にも変化は無い。
 だが分かる。
 彼は既に連中の仲間だ。


某月某日……
 業というものが存在するならば、いや繕うべきではあるまい。
 罪が形を成しているのだ。
 ここは地獄だ。


キアラ
「入れ替わった……?」


ライヘル
「ヒトが『フレーン基質』とかいうのになったという事か?
……続きを読め」


某月某日……
 久方ぶりでラヴィンツェル卿が訪れた。
 便りが無いのを不審に思ったのだろう。


 来なければ良かったものを。
 ラヴィンツェル卿のもとにもまた、奴は現れた。


 イザベラの姿をした悪魔は狼狽する卿の前で受けた仕打ちを暴露した。
 以前の我輩ならば卿を糾弾したことだろう。


 だが最早どうでもいい。


 ラヴィンツェル卿が戸を叩いている。
 扉を壊さん勢いだ。
 応じるしかあるまい。


キアラ
「……終わってる」
ライヘル
「ん?
待て……
続きがある
インクが新しいな……最近書かれたみたいだぞ?」


某月……
 すでに幾日が過ぎたか定かではない。
 だが正気を保つために記そう。


 我々は何故かこの塔から出ることができない。
 ついに誰も口にはしなかったが皆がある強迫観念に支配されている。


 塔の外では我々の存在は許されない。


 馬鹿げている。
 だが我輩にはこの塔の外には我々を構成する要素がない気がするのだ。
 まるで世界が閉じているかのように感じる。
 辛うじて外周に足を踏み出せる程度だ。


 ここ数日顔を合わせていないラヴィンツェル卿もすでに融けてしまったのだろう。
 我輩以外に誰が残っているだろうか?


 ガルドィアンはまだ我輩を認識できているようだ。
 だが、時間の問題であろう。


 ……最後まで研究者でありたい。
 ……我輩はこれより自分の研究室へ向かう。
 そこで我輩も……


           ◆


キア
「融けた……?
ヒトが融ける……?」


オーサ
「……長居せん方が良さそうじゃな……」


ライヘル
「……」


ディーン
「……よくわかんないんだけど
塔に閉じ込められたの?」


ライヘル
「塔に囚われたといった感じだな……
……さて 目的の黄金はもう手に入れたが……
どうする?」


キアラ
「……
行こう
何が起こっているのか確かめたい……!」


   手記6を発見した研究室を出ると上階に向かう人影がある


           ◆


〇6F


   研究ノートを発見する


キアラ
「随分慌てて書いたみたいだ……読みづらいな」


           ◆


・研究ノート5



 恐らくこれが最後の考察となろう。


 我々は我々を悩ます現象に対処すべくあらゆる試みを行った。
 その殆どが成果をもたらさなかったことは現状からも大いに察しがつくであろう。


 だが幾つかの興味深い結果をここに記そう。


 自己崩壊と再生を繰り返すホムンクルスは考え自体は悪いものではなかった。
 「フレーン基質」は初期の段階からホムンクルスに擬態していたのだ。


 この半永久的に循環するグロテスクなオブジェに明確な指令を与えてやれたなら、何かと有用ではあったろう。だが自己保全が最優先となっているため外部からの因子を真っ先に排除しようとするこの傾向は危険である。


 ガルドィアン
 この反射のみで活動する無機質の擬似生命体は例外的な、だが悩ましい成果かもしれない。
 彼らには一つの指令を与えた。
 それは「塔内に存在する我々以外の生命に対する攻撃」である。
 連中に対して次々と攻撃を加えている。
 生命の定義に「四大元素」を用いたのが当たりだったのかもしれない。


 彼らは「成り代わった」仲間に対しても躊躇がなく、それは我々が違うものに変貌しつつある事実を突きつけた。
 また塔外からの来訪者に対しての対応は未知である。


 さて、本題である。
 「フレーン基質」
 なんと皮肉な名であろうか。


 トレーン文明。
 そう……これこそが謎を解く鍵だ。


 知る限りを記そう。
 太古に栄えたトレーン文明ではすべてが思うがまま 望むがままであったという。
 我輩を始め多くの有識者はこれを栄華を極めた文明への賛美―つまり一種の比喩的表現―だと考えていた。
 しかし、恐らく、そうでは無かったのだ。
 思い起こせば散見された文献の多くは相当に古いものであった。
 それも文学的、詩的な表現などないほど古い時代のものだ。


 文献を信用するならば、文字通り「念じた事が実際になった」のだろう。
 我輩自身、いまだに信じられないことではあるがそうとしか考えられなくなってきている。


 夢か幻か、「フレーン基質」とは、そう、我輩の希望願望であった。
 この塔内において我輩の願望望みが少しばかり現実になっただけなのだ。
 なぜそうなったのかは分からぬ。
 果たして我輩の念が通じたのか、偶然の符合なのか?
 我輩に分かるのは、この塔がトレーン文明の遺産であり、その為にこの事が起きている。
 この事実だけである。


 告白しよう!既に我輩は境界のギリギリに居る!
 いや もう何度となく踏み込んでいるのかも知れない。
 意味が分からぬならばそれはまだ正常な証だ。
 だがこの状況を打破できぬならばキミ達にも程なく分かるはずだ!


 今になって思う、四大元素などはこの世界の残りかすにすぎず、もっと根源的な何かが存在するのだろう。


 時間が無い!
 我輩には分かりはじめている。


 何がきっかけかは知らぬが目覚めさせてしまった。
 我輩が聴いていたのは幻聴などではなかった。
 兆しだったのだ。


 忠告しよう!
 もしも我輩に会っても信用してはいけない!
 その中には間違いなく我輩が存在するが総体としての我輩は失われているはずだ!
 それは一体我輩であろうか?


 この認識こそが


 自我の境界が薄い


 時間がない 我々を   世界   


 ディ アラ  メ 
  グ ラ
 だめ
  ヨグ ソト ス
 ウクバ 意味を
 もう保てな


キアラ「インクが生乾きだ……」


           ◆

〇塔 最上階



   人影(フェフナー)を追って塔の最上階まで移動


キアラ
「あなたは……!?」


フェフナー
「我輩は……
錬金術士だ……


おお そうだ!
我輩はラヴィンツェル卿に呼ばれ来たのだが……?


お前は……
生々しいな……
誰だ?」


キアラ
「フェフナー……?」


フェフナー
「!
おお!
知っておるのか!?
いや!フェフナー!
そうだ我輩の名だ!


それだ!
……!
これこそ我輩だ!


お前は……一体?
……いや
しかしもう遅い……!」


キアラ
「遅い?
一体何が……?」


フェフナー
「我輩は……
もはや我輩ではないのだ
然るに
もう遅い


遅かったとは言うまい
お前の責ではない」


ライヘル
「……つまり貴様は
既に『フレーン基質』とかいうものになってしまったという事か?」


フェフナー
「……
如何にも……
『フレーン基質』
……
ヌハハッ!
名はもう何でも良かろう……
だが書き残した甲斐はあったようであるな」


キアラ
「……
……でも
……あなたは
今こうして存在している」


フェフナー
「……
目に映るものが全てという事はなかろう
……
お前の世界と我輩の世界は同一なのか?
異なる宇宙を共有しているのではないと……
誰が断言できるだろうか?
お前の立っているそこは?
はたしてお前の世界か?
……おお
そうだ その通りだとも!
我輩のこの肉はかりそめ!
もはやお前の世界にはフェフナーはおるまい!
我輩はフェフナーであってフェフナーではなきもの!
……お前には分からぬ
お前は自分を俯瞰できるか?
分かるまい?
 ……さぁ
語るべきは語った……
我輩を開放してくれ!
お前にはできるだろう!」


   戦闘
   戦闘終了


   間


ディーン
「……なんだよ これ
……倒したの?」


オーサ
「……
倒したのかは分からんが
どうやら終わったようじゃのぅ……」


ライヘル
「……」


キアラ
「……」


ライヘル、キアラに向かって(キアラの方を向く必要はない)


ライヘル
「どうなんだ?」


キアラ
「……
行こう……
わたし達もあまり長く居ないほうがいい……」


ライヘル
「……
聖印の力……としておくか


ラヴィンツェル卿は実験中の事故で死亡した
黄金も発見した。
確かにこの塔にもう用は無いな」
ライヘルたちキアラを残し出口を目指す
動かないキアラをディーンが気遣う


ディーン
「キアラ……行こう」


キアラ
「……
うん……」


   キアラにしか聴こえない謎の声


「……これは
兆しだ


だが……
まだ……分かるまい……?」


キアラ
「……」


ディーン
「キアラ……?」


キアラ
「うん……」


キアラ出口を目指す


 


〇アレムアリの塔 イベント会話 選択肢


 ■キアラの父とライヘル


「俺は……どこへ行こうとしていたんだった
 かな……」


・クローヴァ
「……そうだ!クローヴァだ!
あんたとは初めて会うはずなのに
よくわかったな」


ライヘ
「(……俺にはわかっていた……?)」


・チルチの森
「うーん……まあ 間違いじゃねぇんだけどよ……
わかってて言ってねぇか?」


■少女?とディーン


少女
「問題
私がいくつになったら 騎士さまが
迎えに来てくれるか知ってる?」


・17
「あたり!早く大人になりたいわ!」
ディーン「(なんだろうな……ずっと前からわかっていた
 気がする……)」


・21以上
少女「クスクス やあねぇ
そんなおばさんになるまで 待てないわ!」


・51
少女
「クスクス 嫌いじゃないわ その数字……!」


・それ以外
少女
「クスクス やあねぇ
わかってるくせに!」


■ヨシュアとキアラ


ヨシュア
「俺を一撃で葬り去った男……
なんと言ったかな……」


・アルディン
ヨシュア
「そう……忌々しい侵略者の名!
アルディンだ!」
キアラ
「(今のは いったい誰の名なんだろう……)」

・あるでぃん
ヨシュア
「カタカナで話せ」


■アリエルとオーサ


アリエル
「はじめまして!私が誰かわかりますよね!」


・フェイラベル
「ふふふっ 誰ですか それ!」


・アリーシャ
「ふふふっ おしい!」


・アリエル
「そうです アリエルで 村でディーンの帰りを待っているんです
私が寂しがっていた って伝えてください……」


・ナツコ
「ふふふっ 誰ですか それ!」

2 件のコメント:

  1. おそらくバグかと思いますがエンディング時、二人の会話の後ブラックアウトしていきますが、その後、ブラック後したまま進まなくなります。
    もしかするとエンディングを追加した影響かも知れませんので可能ならば早急な修正をお願いします。
    (レビューに私的感想と共に書きたかったのですが、ひっかかってしまったので・・・バグ報告のみこちらへ)

    返信削除
    返信
    1. プレイありがとうございます。
      ブラックアウトしたあとでもメニューが開けると思いますので、そこで「エンゲージ」を選んでいただけると進めるかと思います……わかりにくくすみません。
      よろしくおねがいします。

      削除