2021年12月30日木曜日

小説 SERAPH eau rouge #2 深淵 DEEP  作:川合 稔

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 数日前・・・・・・。

 

(周りくどい話だ)

 王宮の一室で国王とグライドの話を聞きながらシビルはそう考えていた。ランバート城はガルド帝国のそれと比べれば小さ目ではあったが、その代わりに壁や床にしみ込んだ年月の皺は深い。恐らくは貴族同士が談話する時にでも使うのであろう、ソファとテーブルだけの部屋でシビルたちはランバート国王に会う事ができた。

「帝国の行動は、日増しに強硬なものとなっていく。その中で、抵抗を続けたそなたの勇気と行動力は尊敬に値する」

「有り難きお言葉」

 ゆっくりとした口調のランバート国王の言葉に、グライドは恭しく頭を下げて答えた。

小説 SERAPH eau rouge #1 魔剣 COLLBRANDE  作:川合 稔

 何もない。

 何も見えない。

 何もありはしない、ただ暗黒だけが広がる。

 動かない。

 動かせない。

 動かしはしない、ただ凍りのように固まっている。

 それは闇。

 どこまでも深く、どこまでも広い永遠の闇。

 だが確かにあの時、その闇の中で光るものがあった、動くものがあった。

 それが何を意味するのかは判らない。

 判るのはその時、確かに何かを感じたということ。この深く暗い闇の中で。

 

 多分それは、白い翼だったと思う