企画の名称からして「これが僕を満足させてくれないわけがない」という確信のようなものを抱いて向かったのですけど、これが、まったく期待を裏切らない内容でして。
企画の意図、作品の意図とかけ離れた見方をしている可能性が大なわけですが、僕はひととき、このへんの建築群──もういいや、「ダンジョン」と言ってしまおう──の中に入り込んで、冒険をしていたような気さえするのですよ。
エドフ、大神殿塔門立面図
……というのはさておいて、このサイドビューを見るだけでFPSに変換できるのがファミコンネイティブの特技といいますか。このへんの絵から、すでに食い入るように見ていたところ、係員の人が「おい、こいつ絵に触るんじゃなかろうか」と警戒心をむき出しにしておられたのが印象的でした。すみませんでした。
しくみの内側のしくみ

風見の地
子供の頃、横浜の祖父母宅からうちに帰る途中にある、大きなゴミ処理場の煙突を見るのが好きでした(だいたいそこで信号待ちになるので、じっくり眺めていました)。
なんでかというと、くらーーーい中に立ち尽くす煙突には、どういうわけかところどころに、小さな四角い窓(というか穴)が空いていて、中に「階段」の存在を感じさせたからです。
「どうやって上るのかなあ」「なんのためにあるのかなあ」「あそこからこっちを見たらどういうふうに見えるのかなあ」などと考えているうちに、だいたい信号は青になるわけですけど、子供には、その煙突の存在意義もよくわかりませんで、そういう意味では「空想の建築」だったんじゃないか、という気がしないでもないです。ゴミ処理場の煙突なので、そんなわけはないのですけど、中で暮らしている人がいるんじゃないか、とも思っていました。
当時、ノートにRPGを「描く」のがマイブームだったんですけど、自分が毎日通っている学校が天にも届く高さになったらどんなダンジョンになるか、をよく題材にしていました。地上何百メートルの高みに、理科室があったらどうなるか、とか、第二校舎との渡り廊下があったらどうなるか、とか(20年以上前から思考回路が変わっていないことに、ちょっとだけショックを受けますけど、まあ、そこはそれ)……。
この「風見の地」を見た瞬間に、そんな幼少時代の記憶がフラッシュバックしまして、ま、ぼんやりしちゃいましたよね。たぶんこの向こうは切り立った崖になっていて、ビュービューと風が吹いてますね。何かの儀式に使うんだけど、信仰の薄れたいまとなっては、訪れる人もいませんね。あと、上の方からアーチャーとかに狙われるので、攻略は困難だと思いました。ここで一日風の音を聞きながら過ごしたい。
バベルの図書館・図書室・上から見下ろす
こういうものがあるというのはまったく聞いていなかったので、いちばんのサプライズはこれでした。
エリック・デマジエールという人の作品で、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの「バベルの図書館」をモチーフにしたものです。
コイズミアヤさんの作品を見た時点で、「今回の展示の裏テーマは『迷宮』なんじゃないか」とちょっとだけ考えていたのですけど、まさかのボルヘス。「僕のイメージしていたバベルの図書館はこういうんじゃなかった」というような気持ちがないわけではありませんが、あの「迷宮文学」を目に見えるかたちとして表現できる、テマジエールさんに、軽く嫉妬しました。
ちなみに、この図書館には「A」から「Z」までの文字を使って、ありとあらゆる組み合わせの本が所蔵されているので、ここに存在しない本というのはないわけです。あとは……わかるな?
と、さんざんとっちらかったエントリになりましたけど(今回に限ったことではない)、ダンジョン好きなら一日じゃ足りないくらいの充実した展示であったと言えましょう。
脳内のファンタジーを、なんらかのカタチで出力する術を持つことができた幸せをかみしめつつ、早くゲームを完成させたいと強く思いました(小並感)。
ICOっぽいの(というか、ICOのパッケージ絵みたいなの)もありましたよ~。
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